2008年6月26日木曜日

無題(プロローグ) part Ⅱ



男は、バックポケットの中から何気なくタバコを取り出すと、火をつけその場に座り込んだ。
無意識のうちにタバコに火をつけたことに戸惑いながら、男は冷静さを取り戻し、周りを見渡した。

男のいる場所も見渡す限りの砂浜で、人の気配もなく、ただ延々と白い砂浜が続いているだけだった。
呆然としていたが、振り返ると、後ろは、うっそうと茂った森が広がっていた。

その場を離れる為に、男は立ち上がり後ろを振り返り、森の中へ踏み込んでいった。
その森は、まだ人が踏み込んだ様子も無く、男は、茂る草木を分け、ただ黙々と進み続けた。

その男は、歩き疲れたのか、その場に座り込み、周りを見渡した。
目の前には、1輪の花が咲き、蝶も飛び交っていたが、男は、ふと花に目が止まった。

この花を見ていると、男の記憶の断片で、一人の女がその花を持っている情景が浮かんでは消えた。
その女性が、誰かわからず、記憶が曖昧なまま、男は、ゆっくりと立ち上がり、前へ歩みだした。



続く。

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